こんにちは、だーこまです♪
建築家自邸シリーズ!
読者のみなさんが家づくりの新たな発見を得られるよう、実務で住宅設計をしている私が建築家の家をポイント解説しようというシリーズです!
今回は建築家谷尻誠の自邸について!
・・・はじめてなのにシリーズと言いよる
続くんかえ・・・
ちなみに『Casa BRUTUS2月号』をベースに解説します!
前回でも述べた通り、『Casa BRUTUS2月号』に掲載されていた谷尻邸は「これからの住宅の在り方」について考えさせられました。
ということで早速本題に進みましょう!
- 建築家 谷尻誠について
- 住む側と設計する側の考え方の違い
- 住宅設計で参考になるポイント
建築家 谷尻誠とは
谷尻 誠(たにじり まこと)
1974年 広島県生まれ
2014年 SUPPOSE DESIGN OFFICE設立
2019年 tecture設立(代表は山根脩平さん)
その他にも社食堂、絶景不動産、21世紀工務店、未来創作所、Bird bath & KIOSK、を経営
谷尻誠さんは日本を代表する建築家の1人です。
26歳のとき設計事務所を始め、その後吉田愛さんと「SUPPOSE DESIGN OFFICE」を設立して現在に至ります。
40代が若手と言われる建築業界では、早くから活躍している建築家と言えると思います
建築家として活躍するさながら、起業も多数行っています
- 社食堂
- 絶景不動産
- 21世紀工務店
- 未来創作所
- Bird bath & KIOSK
- tecture
本も出版されていますが、彼が書いた『CHANGE』は私も好きな本の1冊で、これからの未来をポジティブに生きていくヒントがたくさん書いています
私が好きなのはバスケの話。
建築のお話というより谷尻さんの「働く」に対する考え方の本なので、建築に興味のない人も読みやすい1冊じゃないかな?
変化の少ない日々の仕事に悩んだら、ぜひ読んで欲しいです。
きっとあなたに勇気をもたらしてくれますよ。
建築家の住宅のつくりかた
住む側と設計する側の視点の違い
今回の掲載文で一番印象に残ったところです。
息子の成長も考えてそろそろ家を建てようとなった時、急に不安が押し寄せたのだと谷尻は振り返る。
「仕事も環境も先が見えづらい世の中で、東京に土地を買い、家を建て、30年以上もローンを払っていけるのかな?って。今まで140件以上の住宅設計を手がけてきたのに恥ずかしいんですけど、施主としての重責や不安を初めてリアルに感じました。(以下略)」
『CasaBRUTUS 2月号」p34
たくさんの住宅設計の経験がある建築家でも?
この言葉は施主にとっては無責任な発言に聞こえるかも
誤解しないでいただきたいのは、谷尻さんはいつも施主の家を一生懸命考えて設計しています。
施主が快適に長くこの家で暮らしていく為にはどうしたらいいのだろうか?
設計者はこんな気持ちで、毎回真剣に施主に向き合って仕事をしています。
そして実績が認められれば資産がプラスになります。
一方、施主側はどうでしょう?
自分たちの資産がマイナスになるリスクがある上で、その家に向き合っています。
高いローンを組んで、自分たちの予算の中で最適(得する)な暮らしを実現する為にはどうすべきか?
きっとこのような考え方が根底にあるのではないでしょうか?
施主と建築家、同じひとつの建物をつくるのに、同じ方向を向いているようで違うのかもしれません。
私自身も約50件の住宅設計に携わって、その時その時、精一杯お客さんに寄り添って設計をしてきた自信はあります。
でも、リスクを承知で大きな決断をした施主に、想いの強さは敵うわけありません
だからこそ、私たち設計者は自分が思っている以上に、覚悟を決めて家を建てる施主をリスペクトして、神経を研ぎ澄ましてその一瞬に向き合わないといけないのだと強く感じました。
設計者にとっての戒めの言葉だね
住宅を店舗ではさむサンドイッチ構造のプラン
谷尻邸は店舗併用住宅です。
私が面白いと思ったのが、住宅(プライベート空間)を店舗(パブリック空間)でサンドイッチしたゾーニングになっていること。
店舗併用住宅自体は結構あるのですが、一般的に
- その住宅に住む人が運営するお店として使う
- テナントとして貸し出す場合は住宅と店舗空間を完全に分離する
どちらかです。
せっかく建てたお家だもんね。
自分たちがのびのびできるように工夫するにきまってるんじゃん!
しかし、谷尻邸はどうでしょう?
- 地階・・・テナント
- 1階・・・住居
- 2階・・・テナント
え?なんで住居部分をテナントではさんでるの?
おもしろいですよね!
谷尻さんの考え方は建物の一部を貸し出す前提で設計しています。
そうなると、どうしたら事業主はここを使いたくなるかが重要です
地階・・・道路からそのままアクセスできる利便の良いスペース
2階・・・都心部では少ない、雑多に感じない希少価値の高いスペース
自分たちの暮らしの快適性を優先した空間構成ではなく、借りる(お金を払う)側が得するような工夫を考える。
この発想で住宅を設計するって結構勇気がいりそうですが、お金の問題を解決するひとつの良いアイデアだと思います
住宅ローン額 月80万円⁉︎
掲載文の中にこの建物の月々のローン額について書かれていました。
えっ!月80万円⁉︎
ちょっとゲスいですが、この建物の総支払額を算出してみましょう
住宅ローンの仮定条件
- 毎月の支払額 80万円
- 金利 1%
- 支払い期間 30年
ちなみに総支払額の内訳はこんな感じです。
- 借入額 2億5000万円
- 自己資金 2000万円(SUPPOSE DESIGN OFFICE『HOUSE T』掲載文より)
ちなみに住宅ローンの借入額の限度は年収の5〜7倍と言われているので、谷尻さんの年収は恐らく5000万円程。
SUPPOSE DESIGN OFFICEのホームページを読む限りだと、総支払額が3億2000万円とあるので、実際はもう少し毎月の支払額は多いかもしれません。
参考までに地方(九州)だと、土地込み3000〜4000万円くらいで庭付き1戸建てが建ちます。
金額の想像が追いつかない・・・
す…すごい。
更にびっくりしたのが、毎月80万円の支払いのほとんどを、地階と2階のテナント料でまかなっていることころ。
仕組みかがすごい・・・
谷尻さんはこの建物の支払いについて、一部賃料を回収すること前提としています。
自分たちの住みやすさだけではなく、テナントとしての価値も考えながら土地探しやプランニングもしているのです。
その発想はなかった!
都市部だとそんな感じで住宅の一角を賃貸として利用しその収入でローン返済を考えるはできるけど、基本平家の地方でも同じようにできるのかな?
住宅の支払い=自分で頑張る!ではなく、いかに効率よく支払うかも考えてみるのも良いかもしれません
住宅設計で参考にしたいポイント
その他に住宅設計でお役に立ちそうな参考ポイントを3つご紹介します。
- 明るさを考慮した居心地の良い空間のつくりかた
- 使う素材の数をしぼり、統一感のある空間へ
- 住宅でも工夫次第で生活感は消せる
1.明るさを考慮した居心地の良い空間のつくりかた
本住宅を見ると、一般的な住居に比べるととても暗く感じます。
天井を見てもほとんど照明はないし、窓も北側に大きな開口があるくらい。
谷尻さんは自身の理想の家についてこのように答えています。
自分たちは穴ぐらのような暗い場所にいて、明るい光のほうを眺めている。洞窟のような家ですね。
『CasaBRUTUS 2月号」p34
ん?洞窟のような家?
家と言ったら南にたくさんの窓があって明るい家が多いですよね。
初めて来た土地でも家を見て方角を判断できるくらい。
実際日本の家は、南面開口信仰でたくさんの光が入るように窓をたくさん入れている家が多いです
あと、照明。これでもかってくらい設置します。
設計者としては十分だと思う明るさを提案しても、暗いのは嫌だからと明るい家を求めるお客様は多いです。
だからこちらも不安になって、つい明るすぎる家を提案することもあります。
でも谷尻邸はどうでしょう?
限られた明るさではありますが、どこか居心地がよく感じませんか?
暗いとなんだか落ち着くねぇ
スタバなど長時間ゆっくりできるカフェは少し照明が暗くしている印象があります。
思ったより理にかなっているかもしれません。
暗いと感じても、自分の好きなインテリア照明を配置して、用途や時間に合わせて照度を調整するのも良いですね!
2.使う素材の数をしぼり、統一感のある空間へ
私自身も設計する時に意識している、家全体の統一感。
世の中には素敵な素材があって、どれも使ってみたい!
その気持ちわかります。
けど、家というひとつの空間で考えるときは、あれもこれもとプラスしていくと、どんどん煩雑な感じになって収集がつかなくなります。
いろんな色、素材があると落ち着かない・・・
谷尻邸では素材を極限まで絞っています
- スレート石・・・リビング〜ダイニングの床
- 石目調タイル・・・水回りの床
- 型枠コンクリート・・・大きな箱(構造躯体)
- 木・・・小さな箱(非構造体部分:将来的に撤去可能)
- 鉄・・・玄関の壁、金具など
厳選した素材を使い、お気に入りのインテリアを配置する。
ちょっとした工夫ですが、それだけでグッと空間全体の統一感が高まるんですね。
3.住宅でも生活感は消せる
最近人気のLDKスタイル。
キッチンって一番生活感出るよね?
そうなの!
生活感消すの本当に難しい!
キッチンには、
- 冷蔵庫
- オーブンレンジ
- 炊飯器
- ケトル
その他にも家電もあるし、食器類や調理器具、食材もあります。
無理や・・・
毎日外食かウーバーイーツしかない
谷尻邸は徹底して生活感を排除している気がします。
その為に、ビルドイン家電を選定したり、収納量を増やしたり・・・。
ちなみに全てカウンター下に収納するために必要なキッチンカウンターは長さ5.5mだそうです。
すごっ!
その徹底ぶりにより、とてもすっきりして見えるキッチン周り。
すごすぎます!
その他にもエアコンがない家というのもおもしろい!
基本的に北側のテラスを開けっ放しにするだろうということで、エアコンを無しの家とのことですが、「天井放射ルーバー」を取り入れ、空気を自然対流させることで快適に過ごせるようにしているそうです。
谷尻さんいわく、日本の暑い夏も快適に過ごせたとか。
コロナ禍で換気の重要度が上がっている中、思いもよらぬ最先端の家が実現していましたね。
おわりに
人生の中で一番高い買い物と言われる住宅。
限られた予算の中でより自分たちにあったより良い暮らしのためにどう工夫できるか。
谷尻さんは変化に強い人間でありたいと述べています。自身の家も同じ考えで作ったのでしょう。
一般的な家とは一味も二味も違うと思いますが、あなたにとって参考になるところもあったのではないでしょうか?
私の参考になったポイントは
- 家全体の明るさを抑えて、落ち着いた空間に仕上げること
- 使う素材の数をしぼり、統一感のある空間にすること
- 住宅でも工夫次第で生活感は消せること
建築家の家に限らず、雑誌に掲載している住宅は、今までにない工夫を施している家が多いです。
その中であなたの家づくりのヒントに出会えるかもしれません。
まずは、本屋さんの住まい・インテリアコーナーを見てみて、気になる本をさがしてみてください。
それではまた!
今回紹介した本
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